法律問答集
 一 般
〔倒産に関する若干の問題〕
 取引先が倒産したとします。
この場合
1、 倒産したその日のうちに大口債権者と称する人が倒産会社の機械や商品を大量に持ち去ってしまいました。
 まずこのようなことが許されるでしょうか、また、小口の傷権者であるあなたはこれを黙って見過ごすほかないのでしょうか。
 順に検討してゆきましょう。
 倒産に際しては、債務者は財産を清算する必要がありますが、ただ大口の債権者という資格ないし理由だけであなたを始めとする他の債権者たちに優先して債権の回収を図ることが認められるものではありません。
 抵当権などを有している場合の外は、債権者は全員原則として平等です。
 また、大口・小口を問わずいかなる債権者も法に定められた手続に従わないで勝手に自分の力で債権の回収を図ることは許されていません。これを「自力執行」と言いますが、現行法では禁じられているのです。
 従って、大口の債権者が勝手に機械や商品を持を去ったとしても、あなた達は泣き寝入りして黙って指をくわえている必要は少しもありません。
 では、あなたのとるべき手段は、といいますと、次の方法が考えられます。
 まず無断で商品を持ち去った大口の債権者に対し、取引先に代ってあなた方自身でその持ち去った機械類の返還請求ができます。もとより、これらの機械類はあなたの所有物ではありませんが、持ち去られるままに放置している取引先に代ってあなた自身が請求することができるのです。これを債権者代位権といい法律上認められている権利です。
 また、前述のように現実に持ち去られた場合でなくとも、どうも持ち出すおそれがあるようなときには、前述の返還請求権を実効あらしめるため裁判所にこれらの品物を持ち出し等こ行為を禁ずる旨の仮処分の申立ができます。この申立は、書面審理で大体2、3日で決定がでます。
 しかし、債権者の中に難しい人がいたり、あるいは整理屋とか示談屋とかの得体の知れない人達が介在するようでしたら、破産手続に移行して、このような財産の管理を裁判所や管財人の手に委ねた方がよいと思います。
 破産の申立は、倒産した人自らは勿論、債権者のあなたからもできます。
 その際、破産申立に先立って、破産者の財産が散逸しないように即ち破産財団を保全するため前述したような仮処分も可能です。
2、 倒産した取引先に、あなたの納入した商品がまだ残っているとします。
 この場合、あなたはこれを持ち帰ることはできないでしょうか。
 これは丁度前項の1とは逆の問題です。
 前述したように、現行法では自力執行は認められておりませんが、事例の場合のように商品の売掛代金が未払いで、かつその商品が現存するときは、取引先の承諾を得てその商品を持ち帰ることはできるでしょう。
 この場合、その取引先の承諾は要するにこの売買契約は解除する、従って、代金は払わない代わりにその商品の所有権も自分の元に復帰されるという意味を持ちます。
 従って、取引先の承諾がないときには、このような解除の法律事実もなかった訳ですから、その品物はあなたの物とはならず、持ち帰ることはできないことになります。
 また、この承諾はこのような重要な意味を有するものですから、責任者(代表者)の書面による承諾である必要があります。
 しかし、何らかの事情によって前述のような承諾を得られなかったときでも、あなたには商品代金につき動産売買の先取特権(民法第311条)という担保物権が発生していますので、後にこの商品が競売になったときには他の一般債権者に優先してその商品から債権の回収を図ることができます。
(平成元年3月 36号掲載)
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Last updated on 2000.2.1