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組合には機関として、個々の組合員で構成する総会と理事で構成する理事会、さらに理事会の長たる代表理事もしくは理事長が存在します。
これらの機関の権限は、簡単に言いますと、総会は組合における最高の意思決定機関であり、理事会は組合の業務を執行する機関であり、理事長は組合を代表し具体的な日常の業務を現実に執行する機関です。
このような機関の構成は、丁度、株式会社における株主総会、取締役会、代表取締役に対応するものと言えます。
そこで、以下、前述の中で理事長について説明することにします。 |
2、 |
理事長は理事の中から理事会の決議によって選任されます。(総会の決議によって選任できるかという問題もありますが、別の個所で記します。)
中小企業等協同組合法律(以下単に中協法といゝます。)第36条の3の1項によりますと、理事会の議事は理事の過半数が出席し、その過半数で決することになっていますから、前述の理事長の選任もこの適用があることになります。
また、重要なことは、理事長は理事の中から選任されますから、理事長であるためにはその論理的前提として理事たる地位になければなりません。
ですから、何らかの理由によって理事を退任すれば、当然理事長の職も辞くことになります。
このように、理事長は現実に日常の業務を執行するに当っては総会と理事会の監督を受けることになります。 |
3、 |
組合は通常前に述べたような機構で、しかも組合員の総意のもとに円滑に業務執行がなされることになります。
ところが、組合員や理事の総意から離れて組合活動を行う者が出現したとしますと、前述の正常な組合機構の歯車がたちまち崩れることになり、組合の瓦解につながります。特に、実際上絶大な力を持っていることの多い理事長が横暴な行為に及んだときには大変なことになります。
そこで、以下、このような理事長に退任して貰う方策はないかについて説明することにします。
しかし、この場合、注意すべきことは、理事長を退任させるということは、専横な理事長に退いて貰うということの他に、組合内部、特に理事相互間の派閥争い、あるいは勢力争いが遠因となっていることが、しばしば見受けられるということです。
そして、この後の場合は必ずしも法律問題として把えることのできない文字通り力の問題となってくるような事態も見受けられるのですが、出来るだけ冷静な話合いを期待いたします。
それはとも角、以下、理事長の退任について具体的に説明してみます。 |
4、 |
先にも述べましたとおり、理事長であるにはその前提として理事でなければならない訳ですから理事たる身分を奪えば、当然理事長たる地位も失うことになります。
然るに、中協法第35条3項、6項によりますと、理事は総会において選任(選挙)されることになっております。
解任については、同法は直接規定してはいませんが、定款等に特別な定めのない限り、株式会社に関する規定の趣旨から、組合の総会において理事の解任をなすことも可能だと思います。
この場合、過半数の議決によるべきか、特別多数、例えば3分の2以上とかの議決によるべきかは、結局定款の規定如何によります。
定款において、この点を何ら規定していなければ、合議体の議決は過半数で決するのが原則ですから、それによることになります。
いずれにしても、これらの点を予め定款できちっと定めておくことが肝要です。 |
5、 |
次に、理事長は理事会の長たるものであり、理事会において選任されるものですから、理事会において理事長たる地位を奪い平理事にすることも可能です。
勿論、理事会が理事たる身分そのものを奪うことはできないことは当然です。
そして、この場合も定款に特別の定めのない限り過半数の議決によることになります。
前述のいずれの場合も、理事もしくは代表理事の登記を抹消することによって始めて退任の効力が生じます。 |
6、 |
中協法第42条は商法第272条の規定を準用していますから、仮に理事長が組合の目的範囲外の行為その他法令、又は定款に違反する行為を為し、これによって組合に回復不可能な程の損害を生じるおそれがある場合には、6ヵ月前より引続いて組合員である者は、理事長に対し、その行為の差止を請求することができます。
もし、理事長が、これに耳を貸さないようでしたら、裁判所に対し、差止めの訴を提起し、さらに場合によっては、前述の訴にもとづき、仮処分の申請ができます。
(昭和59年12月 19号掲載) |