法律問答集
 管 理(その他)
〔協同組合の登記〕
1、 今回は組合に係わる登記についてお話ししましょう。
 協同組合については、株式会社その他の法人の場合と同様に、その組織の公示のためには登記をしなければなりません。
 この登記は、組合の事務所の所在地を管轄する地方法務局またはその支局もしくは出張所が掌り、そこに備えつけられた登記簿にされるのです(中協法92条)。
 登記すべき事項は、中協法によると次の事項が法定されています。
即ち、
設立の登記、従たる事務所の新設の登記、事務所の移転の登記、登記事項の変更の登記、参事の登記、解散の登記、合併の登記、清算及び清算結了の登記、設立無効・合併無効・出資1口の金額の減少の無効・総会決議取消または無効の登記などです。
そして、前述の各登記には商業登記法の規定が準用されます(中協法103条)。
2、 次に、これらの登記を怠ったり、又は不実の登記をした場合はどうなるでしょうか。
 中協法によりますと、そのような行為をした役員、清算人には、過料の行政罰が与えられることになっています(中協法115条)。
 しかし、農協の役員については、商法258条1項の規定が準用され、役員が退任してその定数が欠くに至れば、後任の役員が就任するまでは、退任した役員は、その職務を行うべきものとされており、登記所の取扱いも退任の登記申請は、後任の役員の就任登記申請があるまでは、受理しないことになっています。したがって、役員の退任の登記申請を後任の役員の就任登記申請まで放置していたとしても、過料の制裁は加えられません。
 このような変更登記の申請をすべき義務者は、組合を代表する理事であって、平理事には、その義務はありません。
3、 次に、登記について最も重要な登記の効力について考えてみましょう。
 各協同組合法の規定によって登記すべき事項は、登記の後でなければ、善意悪意を問わず第3者に対抗することができませんし(中協法2条)、また登記後は公告がなくても、すべて第3者に対抗することができます。
 この点は、商法12条が登記すべき事項は登記及び公告の後でなければ、善意の第3者に対抗することができないと規定しているのとは大いに異なります。
 また、従たる事務所の所在地において登記すべき事項を登記しなかったもきは、従たる事務所の取引については、登記すべき事項について第3者に対抗することができません。
 このように、登記は登記すべき事項について第3者に対抗するための要件ということになります。
 ただ、協同組合の設立は主たる事務所の所在地において登記することによって設立し、また、協同組合の合併は合併後存続する組合または合併によって設立す組合がその主たる事務所の所在地において合併の登記をすることによって効力を生じるというように、登記に特殊の効力が定められている場合があります(中協法30条)。
 さて、次のような問題があります。
 協同組合の理事の就任は、前述のように登記すべき事項ですが、真実の理事でないのにその就任の登記を承諾した者が、善意の第3者に対して理事就任登記の不実を対抗することができるかどうかということです。
 実は、この点については前回の「取締役の第3者に対する責任」の時にお話ししたことがありますが、要するに結論から言いますと、取締役でないのに取締役として就任の登記をされた者が故意又は過失によって前述登記につき承諾を与えたときは、自分が取締役でないことをもって善意の第3者に対抗することができないとするのが判例でしたから、協同組合の理事についてものれと同様に考えるべきでしょう。
4、 最後に、参事の場合について一寸触れておきましょう。
 消費生活協同組合以外の組合では参事という職分が置かれ、参事については表見支配人に関する商法42条が準用されることになっています(中協法44条2項)。
 従って、協同組合の主たる事務所または従たる事務所の営業の主任者たることを示すべき名称を付した使用人の行為は、参事の行為とみなされ、これについては協同組合が責任を負うことになります。
 そしてこの場合の「従たる事務所」とは、主たる事務所から離れて一定の範囲内で独自に当該協同組合の事業に属する取引を決定、施行し得る組織の実態を有するものをいいます。
(平成元年12月 39号掲載)
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