法律問答集
 管 理(その他)
〔協同組合の総会開催時に提出された白紙委任状は有効ですか。又、白紙委任状の行使の権限は誰にあると考えるのが適当ですか。〕
委任状について
1、 委任とは当事者の一方が法律行為を為すことを相手方に委託することを言い、相手方がこれを承諾することによって成立します。
 委任と代理とは本来全く異なる別個の概念ですが、通常の場合委任するときには代理権も一緒に与えることが大部分ですから、委任行為の中に代理権授与行為も含まれると考えてよいと思います。
 そして、委任状とはある人が一定の法律行為を別の人に委託する旨を文書にした書面のことを言います。
従って、本来この書面には委託する人、これを引受ける人及び委託する法律行為の内容が夫々特定されているはずであり、またそれが原則です。
 本稿のテーマであるこの「委任状」については色々な問題がありますが、今回は組合総会と組合員との観点から生じる種々の問題を考えてみたいと思います。
2、 組合総会は組合の最高意思決定機関ですから、個々の組合員にとっては重大な関心事であるはずであり、本来全組合員が自ら出席するのが建前です。
しかし、世の中のほとんどの集会は例えば株主総会にしろ、破産の債権者集会にしろ本人以外の人に出席して貰って、その人に議事万端を託することが通常行われております。
 これを組合の場合にあてはめてみますと、組合員が総会について、組合または理事長あてに委任状を提出します。
 より具体的に言いますと、A組合員が、何月何日のB組合総会に出席し議案提出及び審議議決権及び選挙権の行使等の一切の権限を他のC組合員等に委任する旨の書面を、組合または理事長あてに提出すると言うことになります。
 このように、提出される委任状には前述しましたように、委任者は勿論、受任者及び委任すべき法律行為等が特定・明記されていなければなりません。
 では、これらの事項について特定・明記を欠いている委任状は無効でしょうか。
 必ずしもそうではありません。
未だ委任状としての効力は完全には発していないが、後にこれらの欠けた部分が補充されれば完全に有効となります。(補充を条件とした法的効果は存するのです)
 しかし、実際には、これらの事項が欠けている、即ち白紙の委任状の方が多いのです。そのうちで、この場合に特に問題となるのは委任を受ける人即ち代理人の記入のない場合です。
 一般には組合が組合員に対して総会招集の通知と共に議決権や選挙権代理行使の委任状用紙を同封して、その代理権の授与を勧誘するという形で広く行われています。
 次にこの場合に問題となる点を考えてみましょう。
3、 代理人を特定しないで白紙にしておくと、理事長は自分に都合の良い者ばかりを選ぶことができるでしょうか。
 代理人欄を白紙にして提出する以上、その具体的な選任は全て理事長や執行部に一任したものであり、これらの人が誰を選任しようと文句の言える筋合いではありません。
もし理事長等の選任が嫌なら、委任状を提出するときに、特定の人を書き込んでおけばよいのです。
 選任は理事長等の自由だと言っても、そこには若干の制約があります。
中協法第11条によりますと、代理人となり得るのは委任者の親族か使用人または外の組合員でなければなりません。
 また、代理人は1人で5人以上の組合員を代理することができません。
 さらに、代理人は委任状を組合に提出しなければならず、単なる口頭では効力がありません。
4、 次に、白紙の部分は総会のどの段階までに補充されなければならないのでしょうか。
 前に述べましたように、白紙委任状は白紙のままでは効力を発しませんので、いずれ補充しなければいけません。
 何時までに補充すべきかは結局委任された事項如何にかかります。
 議決権行使や選挙権行使の代理であればその行使の時までに代理人が決定されていなければなりませんし、議案審議についても委任事項に入っておれば、審議に入るまでには決定されていなければなりません。
 しかし、いずれにしても委任者の意志を尊重する意味からも議案審議までに完全な委任状としておくことが望ましいと思います。
 補充されない白紙委任状はそのままでは効力を発しないことに関連してこのような委任状は総会の出席者の数には算入されないことを注意して下さい。
 さらに、前述しましたように、中協法では代理人が代理できる人数は、4人までと規定されていますが、定款で例えば2人とするなどそれ以下の定めをすることは可能です。
 そうすれば勿論この定款の規定に反する取り扱いはできません。
5、 白紙委任状行使の権限すなわち委任状の代理人を選任する権限は、総会の議長にあるのか、それとも組合の理事長にあるのかという問題があります。
 これは両者の職務の違いを考えれば明らかです。
すなわち総会の議長は当該総会について議事の進行、採択等について責任を負うものであり、議決権を有しないのです。
 一方、理事長は、総会の開催、議案の提出、議決権の確認その他総会に関する全般的な責任を負う立場にあります。
 議長は総会の議事進行について、建前ではあくまで公平無私の立場にあるのに対し、理事長は言わば組合の執行部代表として幾分か色彩をおびた存在です。
 以上のような点を考えれば、白紙委任状行使の権限は議長にはなく理事長にあることは明らかです。
 最後に、ときどき委任状を議長自信が受ける、すなわち白紙委任状の代理人欄に議長の名を記入したり、既に議長の名を記した委任状を提出して、総会における権限を行使することを耳にしますが、中協法第52条3項によりますと、議長はそもそも議決権を有しないのですから当然このような処置はできません。
(昭和60年7月 21号掲載)
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