1、 |
組合における理事とは、所謂役員と称されるもので、通常、理事長、代表理事、専務、常務理事などと呼ばれています。(役員は他に監事というのがあります)。
理事は、組合の執行部であり、業務執行の意思決定機関である理事会の構成員です。
更に、組合の意思を外部に対して表示し組合を代表するのは、理事長とか代表理事とか称される理事のうち代表権を有する理事が行います。
では、これらの理事はどのようにして選出され、そもそも組合とはどういう関係にたつのでしょうか。
次に、順次これを考えていきましょう。 |
2、 |
理事は組合の総会において選出されることになっています(中協法第35条3項)。
その選出の具体的な細目・式次第は、定款の定めるところであり、勿論これに従わなければなりません。
では次に、理事と組合とは法律的にみるとどのような関係になるのでしょうか。
これについて中協法は、第43条において商法254条第3項を準用し、組合と理事の内部関係は民法上の委任契約であると明記しています。
従って、両者の関係は当然に民法第643条以下の委任の規定が適用されることになり、その間に生じる種々の問題は定款に特別の定めがない限り前述の規定に則って処理、解決してゆくことになります。
そこで、以下の両者の間に生じる主な問題点を指摘し、それを順次述べてゆきましょう。 |
3、 |
先づ第一に、理事は正確には何時の時点で正式にその地位に就くことになるのでしょうか。
前に言いましたとおり、理事は総会の決議を以て選任されます。
では、総会の決議があれば直ちに理事になるのかと言うとそうではありません。
理事の就任についても委任の規定が適用されることは勿論であり、そうするとこの場合理事がその決議を受け入れ就任を受諾した時に始めて理事たる身分を取得することになります。 と言いますのは、委任は売買、賃貸借等と同じくあく迄契約の一種なのですから、両者の合意(意思の合致)があって始めて成立するからです。 |
4、 |
理事はその職務を行うについては組合のため最善を尽くさなければなりません。
もとより当然のことであり、民法はこのことを善良なる管理者の注意を以て委任事務を処理する義務を負うという言い方で規定していますが、その趣旨はおなじです。
理事がこの義務を果さなかったときは、損害賠償等の義務を生じますが、果して義務解怠にあたるか否かはケースバイケースで決めるより仕方がありません。
ただ、1回の間違いも許されないというふうに厳格に解釈すべきではないと思います。 |
5、 |
次に、理事は組合の請求によって何時でも委任事務処理の状況を、また退任するときはその頴末を夫々組合に報告する義務があります。
さらに、理事は民法上無報酬となっています。 とは言っても、これは民法上の話であり、定款で報酬を支払うように定めれば勿論それが優先します。
通常は、むしろ報酬を貰うことの方がはるかに多いのです。
このように、委任の規定は強行法規ではありませんから、定款等で民法と異なる規定を設けることは何ら差し支えありません。 |
6、 |
最後に、理事の委任・退任について述べておきます。
理事と組合との関係は委任関係ですから、その委任関係の終了は相手方即ち組合の承認を必要とせず、一方的に終了させることができます。
ですから、理事は一片の辞任届けを提出すればそれで辞任したことになります。
但し、これには次のような制約があります。先ず、理事が組合のために不利な時期に辞任を申し出た時は、辞任自体は有効ですが、それによって生じた損害を賠償する義務があります。しかし、辞任にやむを得ない自由があればこの限りではありません。
次に、理事が辞任することによって3名以上という法定数を欠くときは、辞任した理事は後任者が就任するまでは理事としての職務を続行する義務があります。
理事の退任事由としては、この他に理事の死亡・破産及び禁治産宣言があります。
これらの理事の任務終了の事由は組合に通知するかあるいは既に組合が知っているかのいずれかでないと組合に対抗できないのです。
ですから、理事が「俺は止めた」等と勝手に言っても組合に対する限りではとおらない主張です。
(昭和60年12月 23号掲載) |